サーチュイン遺伝子とは?
■老化や寿命の制御に働く遺伝子で、『長寿遺伝子』とも呼ばれています。
一緒に研究を進めていたレオナルド・ガレンテ教授(マサチューセッツ工科大学)と今井 眞一郎教授(ワシントン大学医学部)による発見
■体の中にあるものの普段は活性化されず眠っている状態です。
■哺乳類ではsirt1~sirt7という名の7種類のサーチュイン遺伝子が見つかっていて、それぞれ細胞内で存在する場所が違い、様々な生体機能をコントロールしています。
サーチュイン遺伝子名 | 存在するところ | はたらき |
SIRT1 | 核→細胞質 | コレステロール調整 (肝臓) 脂肪酸動員、アディポカイン制御(白色死亡細胞) 脂肪酸酸化(骨格筋) インスリン分泌 心臓発生 血管緊張/拡張、血管新生、細胞老化(血管内皮細胞) 細胞老化(血管平滑筋) 神経保護(脳) Notchシグナル経路の制御(個体発生時) |
SIRT2 | 細胞質→核 | チューブリンの脱アセチル化 脂肪分化(3T3-L1細胞) |
SIRT3 | ミトコンドリア | ミトコンドリアタンパク質の脱アセチル化によるATP合成 (肝臓、心臓、腎臓) |
SIRT4 | ミトコンドリア | インスリン分泌(膵β細胞) |
SIRT5 | ミトコンドリア | 尿素サイクル(肝臓) |
SIRT6 | ヘテロクロマチン領域 | 塩基除去修復 DNA二本鎖損傷修復 解糖系、中性脂肪産生制御(肝臓) |
SIRT7 | 核小体 | Pol転写制御 心臓発生 |
ちょっと難しい言葉がいっぱいだけど…この7種類の中でも特に注目されているのはSIRT1、SIRT3、SIRT6なんだって。
サーチュイン遺伝子のはたらき
老化や寿命をどのようにして制御するのか。サーチュイン遺伝子のはたらきを見てみましょう!
―主な4つのはたらき―
①DNAを守り、修復する
②細胞の老化を抑える(活性酸素の除去など)
③細胞のごみの除去、リサイクル(代謝改善など)
④新しいミトコンドリアの産生を促す
様々な臓器や骨格筋、脂肪組織の機能が回復し、身体活動量や代謝が上がります。
人間は、「活性酸素」が出ると不調を起こします。「活性酸素」とは体を酸化・老化させ、病気を起こす元凶となります。、細胞の老化の原因である活性酸素を抑制し、免疫細胞を正常化します。活性酸素が過剰に産生されると、老化やがん、生活習慣病など様々な原因になってしまいます
年齢を重ねても新陳代謝の高い状態を維持していれば、傷ついた「ミトコンドリア」を修復できます。ダメージを受けた「ミトコンドリア」をオートファジーが分解し、さらにサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が再び新しい「ミトコンドリア」に作り変えるのです。。
生物の遺伝情報がつまっている染色体DNAの両端は「テロメア」と呼ばれ、染色体を保護する役割があります。細胞が分裂するたびにテロメアDNAは少しずつ短くなります。これに伴って細胞分裂の回数が減り、やがて分裂しなくなります。これが細胞の老化ということです。
サーチュイン遺伝子がもたらす効果
✅様々な老化現象の改善
記憶力アップや、アルツハイマーの改善と関係しており、心血管系や糖尿病とも関連している
活性酸素の除去によって改善されるのが、加齢性難聴です。年齢を重ねて「耳が遠くなった」と感じることはありませんか?実は、耳が聞こえにくくなるのは耳の中で活性酸素が生まれ、細胞が死んでしまうからなんです。
✅疾患の予防
脳卒中など脳の血流の阻害を原因とする認知症に対して予防に効果的(脳機能の改善)
✅アンチエイジング
炎症活性酸素を消去する作用で、疲労の改善や美白など
肌の紫外線ダメージもサーチュイン遺伝子が改善
シミやシワの改善や皮膚のバリア機能の改善。
皮膚にとって、紫外線は毒です。皮膚が紫外線を過度に浴び続けると、皮膚細胞のDNAがズタズタに傷つきます。うっかり日焼け止めを忘れて、紫外線を浴びてしまっても、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させれば、ズタズタになったDNAは修復されるのです。
皮膚のミトコンドリアが維持できないとシワまみれに!
「ミトコンドリア」は全身に存在しますが、特に重要視されているのが脳、筋肉と皮膚です。
特に近年では、皮膚の「ミトコンドリア」に注目が集まっています。皮膚の細胞のミトコンドリアを維持できないマウスは、シワまみれになってしまうのです。
ヒトの皮膚でも同じように、シワまみれになってしまうことが考えられます。この結果から、今後は「皮膚のミトコンドリアを改善する化粧品」が出てくるかもしれません。
若返りの鍵は「ミトコンドリア」
「ミトコンドリア」とは、私たちの細胞の中にあるエネルギー生産工場のような働きをする細胞内小器官です。1細胞あたり100〜2000個程度含まれます。
若々しく健康な身体を保つためには、「ミトコンドリア」を元気にしていくことが非常に重要です。
傷ついたミトコンドリアが増えると老化する
「ミトコンドリア」が傷つくと、細胞にダメージを与える活性酸素を産生します。
活性酸素が過剰に産生されると、老化やがん、生活習慣病などの原因になってしまうのです。
しかし年齢を重ねると新陳代謝が落ちるため、傷ついた「ミトコンドリア」が代謝されずに老廃物として蓄積されます。その結果、加齢性の不調や見た目の老化が起こるのです。
その他、血糖値を下げるインスリンの分泌を促し、糖や脂肪の代謝をよくしたり、神経細胞を守り記憶や行動を制御する
サーチュイン遺伝子を活性化する方法
ここまでくると、「サーチュイン遺伝子にしっかり働いてほしい!!」って思いますよね。
早速、活性する方法をご紹介していきますね♪
- ♦睡眠
- ♦運動
- 運動はNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)というサーチュイン遺伝子を活性化する補酵素を増やすとされています。鍵を握るのが、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という物質だ。NADは、細胞内のミトコンドリアにおけるエネルギーの産出に欠かせない補酵素で、サーチュインを活性化させる役割を担うとされている。組織中のNAD量は加齢と共に減少するが、NADを増やすことができれば、サーチュインを活性化させ老化を遅らせる効果を期待できる。
- ♦カロリー制限
- 飢餓の状態となることやカロリー制限をする方法があります。 飢餓状態が続くと健康を損なうリスクもあるため、実践するならばカロリーのコントロールをする方が続けやすいでしょう。 カロリー摂取量は必要量の70%程度に抑えると効果的であるとされています。
- ♦食べ物・サプリ
- ウロリチンという成分がサーチュイン遺伝子を活性化する物質として注目されています。ウロリチンは、ザクロやベリーやナッツに含まれるポリフェノール(エラグ酸)を摂取すると体内で作られます。「ウロリチン」はザクロに含まれる「エラグ酸」の腸内代謝物で、傷ついた細胞の修復をサポートしてくれます。0しかし、個人差により摂取しても体内で産生されない場合もあるため、サプリメントとして実用化されています。赤ワインなどに含まれるレスベラトロールもサーチュイン遺伝子の活性化に繋がるとされていますが、1日に100本ものボトルを飲むほどの量が必要になります。ワインでの摂取は難しいため、レスベラトロールのサプリメントが販売されています。
サーチュインの発現量を増やすことで老化制御につながる効果を得られたとする動物実験が多数報告されており、人を対象とした臨床試験も進められている
細胞ひとつひとつが元気になれば、私たちは何歳になっても病気になりにくい身体を維持できるのです。筋肉の改善や肌老化の改善にもつながり、見た目の若々しさも保ちやすくなります。
今までは心臓なら心臓の治療、脳なら脳の治療……というように、それぞれ異なる治療が行われてきました。しかしこれからは、もっと根本的な改善をしていく時代になるかもしれません。寿命老化の原因である、細胞の酸化の予防やDNAの修復など全身の細胞へ作用します。サーチュイン遺伝子が全身に効果を及ぼすことで細胞を若く保ち、疾患の予防にも作用するため、寿命が伸びることにつながると期待できるでしょう。